中田と岡野
どのメディアも未だに中田の引退の話だらけだ。日本代表を立て直すために彼の存在を無駄にすべきではないという論調が多い。
中田が岡野にパスを出しまくったジョホールバルの最後の10分間を思い出す。初めて日本をワールドカップに連れて行ってくれたのは、この二人の男だった。正直、最後の10分間、中田と岡野以外の選手がボールを触ったのかどうか全然記憶にない。イランの選手たちが疲弊して、GKも満身創痍の状態だった。延長で出たばかりの岡野がゴール方向に走ると、中田から必殺のパスが出る。どこかで点を取るだろうというゲームの流れに導いていた。
岡野が走り、中田がその後を追って走った。そういえばこの二人の男は、どんな試合でも全力で走り続ける選手なのだったなと思い当たる。中田は若くして引退し、岡野は未だに浦和のピッチでサポーターの喚声を浴びて、今もゴールに向けて走り続けている。走る選手たちの存在感は確かに、他の選手にはない、独特のものがある。サポとして彼らを見ていると、熱狂が内から迸る思いがする。
オシムが走るサッカーを標榜したが、ジーコは任せるサッカーを与え、小野伸二はフェイエノールト元年の姿を忘れ、走ることを忘れ、中田よりもきっとずっとボール扱いの上手いその天賦の才能をベンチに置いてきてしまった。