シュンの日記なページ

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交番小説

 金曜日になくした財布が、月曜日に出てきた。なくした場所は、会社の駐車場。出てきた場所は、ぼくが落としたのであろう車のドア付近から数メートル離れた草むら。それを拾い上げてくれた人が、会社にではなく、札幌市を挟んで反対側の交番に届けてくれた。

 見事に札だけが抜き取られていた。小銭もカード類もすべて財布に残されていた。第一拾得者は、財布を拾い、札だけを抜き取って、すぐに草むらに財布を投げ捨てた。第二拾得者はそれを拾って、市の反対側の交番まで運び、交番に届けた。

 交番は無人だった。第二拾得者は、そこでメモを書き、ぼくの車のナンバーを書き、ついでに可愛い犬の漫画を書いて、メモと財布とをデスクの抽斗にしまって身元を書かずに去っていった。

 警察官に代わって交番相談員という役割の人が交番に入っていた。駐在の警察官が体調を壊しているのだそうだ。相談員から事情を聞き、書類に記入捺印して、財布をぼくは取り戻した。

 いろいろな思いが去来する。人の一瞬の行為。一瞬の判断。悪くもない人なのかもしれないが、札を抜き取り、財布を捨て去る。もっと悪党ならば、カード類を使用して多くを手に入れようとしただろう。免許証も入っている。個人情報を売ることだってできたはずだ。逆に第二拾得者が最初に拾っていれば、そのまま交番に財布が直行したのだろう。

 それにしても、街中に交番が少ないことに、今度の件で気づかされた。交番があっても留守が多いという事実にも。佐々木譲の『制服捜査』を4日に読んだばかり。十勝の片田舎の交番の警察官の話だった。交番に誰もいない札幌を舞台じゃ、『制服捜査』は成り立たないな、と思った。逆に、交番相談員というボランティアみたいな人がミステリの主人公になる将来も、そう遠くはないのかもしれない。