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水を運ぶ者

 スポーツ紙のコラムで、オシムの代表試合に対する意見が書かれていた。司令塔ばかりいたって強いチームはできない。水を運んでくれる者がいなければいけない、と。今の日本代表の中盤で水を運んでくれるのは福西一人か? と。

 浦和レッズ鈴木啓太ディナモキエフのオファーを正式に断ったという。ディナモキエフというのはウクライナのリーグでいつも優勝するチームといえばそれまでだが、そこからのオファーというのは、少し意味が違う。ウクライナの常勝クラブチームはヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグの常連でもあるからだ。世界の注目する各国リーグのトップたちと戦える権限をいとも簡単に獲得している常連チームなのである。だからこそディナモキエフの誘いというのは、とんでもない価値がある。選手個人にとって、これ以上ないほどの機会を山と与えてくれるに違いないから。

 その黄金のオファーを断って、啓太はレッズの今シーズンの優勝に賭けた。こういうとき、日本のリーグも世界標準のカレンダーで実施して欲しいとつくづく思う。移籍先にしたって移籍元にしたって、シーズン半ばの移籍しかできない以上、やはりこれという形での納得間は選手にもチームにもないと思うから。

 そうしたことも手伝って、ただでさえ責任感の強い啓太がレッズを見捨てることができないのは当然であるし、チームも啓太に去ってもらっては困る。何しろ、司令塔や花形リベロを助けて、なお存在感を示す「水を運ぶ者」であるからだ。レッズにはタレントと呼ばれる選手と、水を運ぶ者の存在がバランスよく存在する。啓太も山田も酒井も内館も水を運ぶ選手であって、ジーコにチョイスされるタイプのタレントではない。でも今のレッズの躍進の原動力は、花のあるワシントンだけでないことは、ましてや新聞では必ずトップに取り上げられる小野伸二がつくってきたものでもないことは、あまりにも明らかなことだからだ。

 啓太は、かつて五輪代表予選を闘い、山本監督にいとも簡単に捨てられた。不遇といってもいい。しかしそれ以上に今、玄人受けする存在として、評者筋の間で高い評価を静かに受けつつある。そういう存在感の示し方があっていい。深く静かに潜行しつつ、ジーコの戦術を別の角度から抉ってやってもいい。

 オシム率いるジェフにもそういえば水を運ぶ選手が沢山いる。日本代表マルタ戦の中盤の空洞を見ていたら、本当にジーコの馬鹿さ加減を思い知らされ、彼がいかにJリーグから、サッカーのエキスを吸い上げていないのかがよくわかった。ジーコは花のある戦場でしか戦ったことがなく、今も、彼の視線は光まぶしい方角にしか向いてゆかないのだろう。