旭川駅前の思い出
朝食を旭川のホテルで取る。よく晴れた朝、駅まで歩く道々、昔、家内と訪れたこのあたりで喧嘩になったことを思い出した。本州からの新婚旅行の道中の話だ。
バスに家内がカメラを忘れ、駅前のバス会社で回収を依頼したのだった。スケジュールどおりにその後道北へ移動してから、数日後に再びこのバス会社に立ち寄ると、カメラはちゃんと届けられており、新婚であったぼくらは数日前の喧嘩などどこ吹く風であった。
その後、駅裏のラーメン屋へ寄ったが、とてもまずくて、食えたものではなかった。北海道であればどこでもラーメンは美味い、なんて信じ込んでいた、まだまだ幻想だらけの本州人であった頃だ。
今日は、そのバス会社の看板を探しても見当たらなかった。もちろんまずかったラーメン屋がどこなのか覚えてもいない。新しくなる前の買い物公園を歩いた記憶があるが、北海道に渡ってからこの方、このあたりを歩いたことは一度もない。
車での移動が習慣となり、思い出すことのできるような、丹念な徒歩の記憶が作り出せなくなったことを、少し寂しく思った。二十年も昔の新婚当時の家内とぼく自身を思い出し、経過した時の長さがさらに切なさとして身に沁みた。