轟音
アメリカ 3 - 2 日本
野球場で国際Aマッチというのは冗談か? それ以上にあのスリッピーな芝は、確実にこの試合の見応えを大きく削いでしまっていた。両チームともスリップするシーンが多かった。
もっとも、そんな状況でも忠実に狙いにいったアメリカがスリップする日本選手からボールを奪い、自分らのゲームにしちゃったところは、勝利への決意の漲り方の差として感じられる。アメリカの選手がスリップしても日本はそこに詰めていないし、たまさかマイボールにしてもロングで久保狙いの一辺倒だから、たいていは軽く守られてしまった。それ以前に、あれほどのパスミスオンパレードでは、どんなチームにだって勝てないだろう。
アメリカのサッカーは素晴らしかった。何がといって、自分の責任範囲を非常に大きく広く持ってプレイしていること。ゴール前のチャンスにいつも四人も五人も飛び込んで行っているチームは、やはり恐ろしいものだし、ダイナミックに前後左右を動き回り、それも選手間の間合いがとてもリズミカルで美しい。二点目のアメリカのゴールなんて、なかなか見られないくらいの連携美!
日本がその美しさを発揮し始めたのが、後半の後半。阿部・長谷部投入によりサイドチェンジが急激に増えたし、巻・佐藤寿人の2トップのスペース狙いが光ったおかげで、最後攻撃もどんどん増えていった。小笠原ではなく伸二の交代というのが納得いかなかったが(今日の小笠原にいいところあったか?)、長谷部の個人スキルの高さは存分に見られた。とりわけドリブルからのスルーパスがかちりと決まったときの美しさは、長谷部そのものの魅力でもある。
やはりサッカーはアグレッシブで広視野な選手によって質が上がる。素晴らしいシーンには轟音のような喚声が競技場を包む。今日は、アメリカの側ばかりから轟音が上がっていたけれど、巻のヘッド、長谷部のパスに起こった轟音は、忘れがたい。もしかしたら、ぼくの中の都合よく作り直されてしまった記憶だったのかもしれないけれど、それはそれで別に構わないだろう。