シュンの日記なページ

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紳士服店にて

 埼玉に在住し東京の会社に勤務していた頃には、港区白金台にあるオークランドという名のこじんまりした洋服店に、仕事に着用する衣類を選びに行ったものだ。値切って安くしてもらったものだから、いい素材のものを定期的に仕入れ、頑丈なそれらの幾着かは、札幌に移った今でも着ている。太陽が雪に覆われた札幌のすべてを輝かせている今日も、実は。

 ひさびさに紳士服店に入ったのは、ツイードの背広が久しぶりに欲しくなったから。格安で柄を選択して生地を仕立ててもらうコースもあったが、仕立て上げの規格品のものでも構わなかった。いろいろなツイードに目を奪われたが、冬の札幌でツイードをこれまで買わずにいたことが不思議に感じられた。昔懐かしい感じがするヘリンボーン上着に、ダークグレイのスラックスを合わせ、さらにシンプルなネクタイを二本。一応、年末からの冬物売り尽くしセールだったから、生地も仕立て上げの背広ももうなくなりかけていて、価格も20%程度の割引適用である。

 紳士服店に流れる静寂が好きだ。そこで年配の店員や店長と服についてあれこれ相談しながらいろいろな生地の肌触りを楽しむ時間も、どことなく世間離れしている気がして楽しいものだ。世間に出てゆくために必要とされている服を買う時間が世間離れしているというのも、おかしな気がするけれども。

 服を選んで、店を出て、麻生のとり千で定食を食べようと店に入ると、鹿肉のバター焼きがついに今冬初めてお目見えしていたので有頂天になった。鹿肉バター焼きでライスに合うものかどうか心もとなかったが、醤油とバターの焦げた匂いの絡んだ、ミディアムレアの鹿肉は何とも香ばしく、美味しかった。最後に千キャベツを残りのタレに浸して口に放り込むと、肉汁の沁み出た独特の油分が、ただものではない馥郁を鼻腔に広げるのだった。