10月の新刊案内から
毎月、新刊案内を頂いたり、書籍そのものを送って頂いている出版社のかたがたには、とても感謝していて、とても一言ではその気持ちを言い表せないくらいなのだが、そうした情報から思いついたことや、興味をくすぐられた事など、ありったけをピックアップしてゆこうと思う。
早川書房は創立60周年企画が続いており、今回はその記念出版として、異色作家短編集の新装版を全20巻で復活する。幻の作品を新たに収録するなどサービス折込済み。初回配本はロアルド・ダール(開高健訳です!)、フレドリック・ブラウン(星新一訳!です)。
感動的な翻訳者もともかく、続く作家はブラッドベリ、フィニイ、ブロックと、異色作家というよりは、どきどきするような作家ばかり。フレドリック・ブラウンやレイ・ブラッドベリのショートショートにときめいたのは十代の頃。それも早川ではなく創元だったのだけれど。
参考までに第二回配本はシオドア・スタージョン、リチャード・マシスン。
第三回配本は、ジョルジュ・ランジュラン、シャーリイ・ジャクスン。
早川の新刊では、何と言ってもエド・マクベイン追悼の翻訳『耳を傾けよ!』。タイトルからすぐに「耳」という言葉を抽出して連想されたあなたは正しい! そう、あの87分署の宿敵デフマンの物語である。作者の死後、何冊まで翻訳されるのか、作家は死んでも、作品はまだまだ続いている、というあたりが、刊行時の解説でも明らかにされるのだろうと思う。
『サイレント・ジョー』でひときわ有名になった作家T・ジェファーソン・パーカーの新作は『カリフォルニア・ガール』だけど、これは本年度MWA賞(エドガー賞のことです!)、最優秀長編賞受賞という凄さ。早川、いい作家に目をつけてきたものである。
ぼくが追い続けている【ポケミス名画座】は『5枚のカード』というミステリー・ウェスタン。レイ・ゴールデン著。映画化はヘンリー・ハサウェイ監督。『勇気ある追跡』『ネバダ・スミス』『エルダー兄弟』『西部開拓史』『アラスカ魂』の監督。出演者はディーン・マーティン、ロバート・ミッチャム。
文庫化で目に留まったのはR・B・パーカーのジェッシイ・ストーン・シリーズ『湖水に消える』。気になるのはローラ・リップマンの『あの日、少女たちは赤ん坊を殺した』という過激なタイトルの一冊。アンソニー賞、バリー賞をダブル受賞した話題作である。
東京創元社に移ると、まずは『飛蝗の農場』のジェレミー・ドロンフィールドの新作『去サルバドールの復活』上下巻があるが、天才ギタリストの伝説と古城という舞台なんたらで、そのゴシックな紹介文に、ぼくは二の足を踏んでしまう。