シュンの日記なページ

当別町スウェーデンヒルズ移住者 ブックレビュー 悪性リンパ腫闘病中 当別オジサンバンドOJB&DUOユニットRIOのVocal&Guitarist ツアーコンダクター 写真 スキー 山 田舎暮らし 薪ストーブ

寿司屋のカウンター

 寿司屋のカウンターに初めて入ったのは、北海道旅行の最後の夜、朝発のフェリーを待って、小樽会員会館(素泊宿泊料1500円也)を使い、寿司代を浮かした、若かりし新婚の頃のことだ。やたらにどきどきして、特上を握ってもらい、酒を少しだけ飲んで、会計をすると予想以上に低かったのでほっとしたのを覚えている。
 その後近所で同じように寿司屋のカウンターに座る習慣を、ぼくら夫婦も何とか持つことができるようになった。ある程度何と何を頼むといくらくらいになるという計算が立つようになって、何だかようやく大人になったのか、と意識したものだ。
 明日、大事な会議があるのに、台風が上陸して飛行機が欠航になりそうな気配だったから、一日早く東京に出かけた。本社の上司である役員と台風の風が吹き荒れる東京の街を歩いて寿司屋で酒を飲んだ。
 札幌に移住して以来、そういえば寿司屋のカウンターに夫婦して座ることもなくなった。いや、子供ができたのが、そういうところに出かけなくなったきっかけであったか。ときに、小樽のあの思い出の寿司屋に出かけることはあったけれど、いつの間にか口コミで人気が広がったその店は、もはや価格でも構えでもぼくらのような家族を寄せつけない。
 東京の寿司屋の割りに値段は安く、ネタも上々だった。かえってネタに甘えるところの多い北海道の寿司屋に比べて、下拵えやカウンター越しの会話にも努力を怠らない東京の寿司屋は、久々に入るとやはり一級なのであった。
 上司が会計をして領収証を取っている。なんだ、会社の金での支払いか。本社の役員は自分では直接金を稼がないから、地方の営業であるぼくのような人間は、公費での支払いでは、どうもご馳走された気になれない。自分で稼いでいる公費じゃないかと愚痴りたくもなる。まして、こういう寿司屋に頻繁に通っているであろう本社勤めの上司たちを想像すると……。
 でも本社に転勤するか? と言われれば、多少稼ぎは足りなくても北海道の生活に満足しているのだから、首を縦に振るわけには行かないのだけれど。
 そういえば、強風の中で分かれた役員も、昨年、西日本の片田舎から出てきた元は同じ立場の先輩なのであった。