富良野、糺の森にて

　帯広に向かう途中、久々糺の森・山の店に立ち寄る。閉店時刻の５時に到着したが、店主に頼んでコーヒーを淹れてもらう。７時からは富良野駅前の店を開くので、店主も忙しいのだ。カウンターで苦味の利いたコーヒーを向かい合って飲む。店主もいつも同時に自分の分を淹れて飲む。ネル・ドリップで淹れる引き立てのコーヒー豆のが、熱いお湯を注がれて匂い立つ。ぼくはアイスコーヒーが好きじゃない。店主によると、コーヒーが好きな人はコーヒーの香りを楽しむ人が多いから、香りのないアイスコーヒーを好まないのだそうだ。
　いろいろな話をする。満月の引力と狂気との因果関係。海水と血液との塩分の因果関係。太陽や地球の自転の周期と人間の生活のリズムなどについて。
　背後ではバリの音楽がかかり、外の熱気を遮断して、暗い木調の店内は極めて涼しく快適な世界である。いろいろなことを忘れることのできる時間だ。