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『七人の侍』

 どう考えても昨日見た『スズメバチ』がきっかけになって、3時間半の大作『七人の侍』をきちんと見てしまった。前半は軽妙なユーモアと、農民と侍の世界観の差を綯い混ぜて奥行きの深い映像が続き、有無を言わせぬ戦闘シーンへと突入してゆく。
 士農工商というけれども、常に思うのは、「農」がなぜ「士」に続く二番目なんだ? 「商」は四番目の位というけれど、綺麗なおべべを着て小判を運んで歩いている時代劇の悪徳商人は、本当に「農」よりずっと下の位なのか? この映画とは関係がないけれど、薬の行商をしていた土方歳三は「商」から「士」へと三つもの段差を駆け上がったのか? 小学生のときに先生に質問しておけばよかったと後悔している疑問の一つだ。
 『荒野の七人』を先に見てしまった口だけれど、あちらでは向こうの有名スターが勢ぞろいしている印象が強く、正直ストーリーなどより、それぞれの共演のほうに目が行ってしまった。マックイーン、ブロンソン、コバーン、ロバート・ボーン、とぼくの世代にとっては最高のスターばかりだった。リーダーであるユル・ブリンナー志村喬のスキンヘッドが無理矢理でなく、どちらも自然体なので滑稽だ。
 群集の闘い、しかもほとんどが農民の群れという難しいセッティングを、これほどの絵にしたという黒沢の偉業は凄まじい。銃といっても敵方の種子島銃数本、あとは竹槍に駆け抜ける馬ばかりが目立つ、これ以上ないほどに道具のない戦場。
 昨日見た『スズメバチ』は、多くの武器に多くの戦闘グッズ、そして遮蔽物やモノの多さが絵をカラフルに彩っていた。同じ包囲籠城を扱った映画でありながら、『七人の侍』の難度の高さに凄みを感じざるを得ないのだ。
 しかも人間たちの個性の表現も深く、陰影が濃い。『スズメバチ』の新鋭監督フローラン=エミリ・シリはインタビューに答えて「日本映画は、黒沢明の大ファンです。小津安二郎溝口健二も大好きです。」と言っている。道理で、閉じ込められた者たちの喜怒哀楽や懊悩の姿に焦点を合わせる点で、二本の映画に共通項があると感じたわけだ。