幻メール

　ＰＣへのウイルス・メールはもう毎日のことだけど、携帯メールにウイルスらしきものが飛び込んできたのは、初めてのことだ。
　それでもウイルス・メールそのものであればぼくはそう驚かなかったに違いない。
　驚いたのは、メールの差出人が、遠い昔に付き合ったことのある女性の名前であったことだ。
　見当はつく。何らかのグループメールに対し「全員に返信」モードでメールを返送した後、このグループメールからウイルスが配信されていること、つまりグループの誰かが感染していることは既に報告されていたからだ。不特定のメンバー・アドレスで配信されることはなんとなく想像もつく。でも大勢の中からなにも一番どきっとする差出人をウイルスが選択することもなかろうに、と思うと、余計何らかの作為さえ疑われ、ぼくはより一層どきどきしてくるのだった。