ミシェル・ヴァイヨン
リュック・ベッソンの作ったル・マンの映画だというので、なんとなく録画してあったものを、夜中に見始めたら止まらなくなって全部見てしまった。相変わらずリュック・ベッソンはリュック・ベッソンであり、御伽噺や寓話のような、リアリティのない勧善懲悪ものを、絵画的な映像だけで大人に向けて見せてしまう天才であるのだった。
すべてのシーンがことごとく美しくあり、絵画的であり、カラフルで、どう見たってCGでありながら、ため息が出るほど美しい。マシンも人間も、そして何よりも空の青、サーキットの銀色が美しい。
善と悪の対決が生まれにくいレースという世界に硝煙や死の匂いを持ち込んでアクション映画に変えてしまう魔法。いつも、誰も思いつかないストーリーを提供するベッソンの無邪気さが、何とも有難い一夜だった。