シュンの日記なページ

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踏ん張り

 雨の日にジュビロに勝てた磐田ヤマハスタジアムでの初勝利のことを思い出す。勝つまで毎試合あのスタジアムに足を運んだ。きっちりとあそこでの勝ちを見届けて(ドゥンガが外すというPK勝ちだったけど)、その後、ぼくは埼玉を離れ、札幌に移住したのだった。
 試合前、埼スタにいるサポ仲間から今日は雨だと携帯にメールが届いた時点で、これはげんがいいかもしれないと思った。雨の磐田戦には勝てる気がする、と。
 さすがにヴェルディなどとは勝負強さが違うジュビロは、ここというときの得点機を逃さないチームだった。今日の決定率から言えば、得点機を何度も逃したレッズに比してジュビロのそれは際立っていたといえるかもしれない。逆にいえば、それほどジュビロのチャンスを殺して、マイペースで浦和が試合をハンドリングしていたと言えないこともないのだが。
 感動の瞬間というのは不思議なもので、そこに至る地獄のような展開、苦しみの中から這い上がるようなひとつのドリブル、一人の男の踏ん張りによってそれは生まれた。あの二点を追いつかれていなければ、あるいは、永井が、エメが、山瀬があの決定機を決めていれば、こんな感動的なゴールを生み出す素地はそもそもなかった。駄目レッズの素顔が少しだけ顔を出し始め、弱音という言葉が少しだけ聞こえ始めたとき、毎試合担架で搬ばれ、毎試合ゲーム後にうずくまるほど、いつも必死さを前面に出してきた若者の踏ん張りが、ついに埼スタをどよめかせたのだ。
 TV生中継を見ながら、ハーフタイムの前後だったろうか、家人になんとなくぼくは言った。長谷部という選手は高額移籍させた山瀬の負傷中の代理選手として投入されたけれど、結局その後自らのポジションを自らのポジティブな姿勢によってもぎ取った精神力の強い選手なんだと。いずれ誰がどういおうと、日本が代表に必要とする選手になるんじゃないかと思っているよ、と。
 その長谷部が今日の切り札になるなんて、もちろんそのときは思っても見なかった。だが最後のシーン、ドリブルを突っかけてゆく長谷部に、今日はパサーの面影はなかった。最後までこいつはゆくな、と確信できるそのコース取りを見ていたが、ため息の出るようなあの美しい放物線……そこまで冷静かつ精度の高いプレイをラストのあの時点あの場所から繰り出せるとまでは、さすがに読めなかった。
 精神力の賜物。そういうゴールほど心に響いてくるものはない。小手先の技術ではなく、気持ちの入った球筋。それはどんとたたき出したゴールではなく、見事なループという形をとって表現された。そこに長谷部という男の凄さが存在する。