怪談
妻が温泉には四つくらいの小さな女の子がいたよと言う。独りで四つくらいの小さな女の子が果たして風呂に入っているだろうか。男湯のほうから外で繋がっている露天風呂を通ってそちらのほうから入ってきたよと言う。だから男湯にお父さんがいるんだなと思っていたそうだ。
ちなみにぼくと息子は、貸切だね、と言って誰もいない男湯を楽しんでいた。さして大きくない風呂で、露天風呂にも浸かり、ああ女湯と繋がっているんだなと、誰もいない湯船を見つめもした。
妻の話では、小さな女の子は露天風呂のほうに戻ってゆき、そしていなくなったのだそうだ。お父さんの方に戻ったんだと思っていたそうだ。
ぼくらは脱衣所を出た廊下で顔を合わせたが、廊下にも休憩の広間にも誰も客の姿は見えなかった。
小さな四つくらいの女の子って一体どこから来て、どこに消えたのだろうか?