シュンの日記なページ

当別町スウェーデンヒルズ移住者 ブックレビュー 悪性リンパ腫闘病中 当別オジサンバンドOJB&DUOユニットRIOのVocal&Guitarist ツアーコンダクター 写真 スキー 山 田舎暮らし 薪ストーブ

経年劣化

 板橋文夫のピアノトリオを聴きに出かけていた30歳になるかならない頃のことだ。横浜のAIREGINや、吉祥寺の次郎吉、新宿ピットインといったところに、日常的に出かけて、インプロビゼーションに身を震わせながら、バーボンで酔っぱらっていた。
 コルトレーンに夢中だった。彼のカルテットのマッコイ・タイナーに日本で最も近いのが板橋だと思っていたけれど、マッコイほど滑らかじゃないところ、切れてしまうような乗りこそが、板橋の憑かれたようなプレイの魅力だった。彼の作るちょっと日本的なメロディも好きで、栃木県の足利出身者らしく、WATARASEという曲は、とっても好きだった。もちろん森高千里の「渡良瀬橋」も別の意味でお気に入りだったのだが。
 なぜ今ごろ板橋文夫の話なのか、というと、通勤の車の中で聴くために古いカセットテープを漁って、聴くようになったのだ。そして何日か、毎朝毎晩、板橋文夫の古いテープをエンドレスでかけていた。1984、5年頃のIMPACTとRED APPLEの二枚のアルバムが両面に録音されたものだ。
 アルバムが終わると、少しの間空白の間が存在する。CD、MD、MP3に馴れてしまっており、今やここで早送りという動作をしないと、裏面にすぐには移行してくれないのが、いささかかったるくもあり、おかしくもある。そしてある時……
 早送りが終わらないのだ。しゃかしゃかと巻いたまま、終わらない。
 仕方なくテープを取り出してみると、見事にテープは切れてしまっており、空っぽのリールをカーステが際限なく巻き取り続けていたのである。ああ、経年劣化という奴だ。音楽自体はちっとも歳を取らずに、あの頃の熱狂を伝えてくれているのに、カセットの方は、残念ながら経年劣化しているみたいなのだった。
 誰だ、お前も経年劣化……なんて言っている奴は?