多彩なる路面

　スケートリンク状態の路面が朝日にぴかぴかと光っており、世にも恐ろしい。しっかり除雪をした後、路面を平らに削り取るような車が走って、朝の幹線道路をこういう危険な代物に変えてしまう。おかげで、皆、怖々運転。のろのろとろとろと必要以上の渋滞を作り出す。きゅっとブレーキを踏もうものなら、車はたちまち斜めになって停まる。冷え込んだ朝は余計にしっかり凍っており、滑りがひどい。
　こんなひどい状態になるのなら、いっそ除雪なんていい加減にしとけ、と思いつつ幹線道路を外れると、いきなり柔らかい雪が轍状態にふくらんで、その後いろいろな風にタイヤに寄せられ、変形してまるで練っている途中のアイスクリーム状態になっており、ここではやたらタイヤを取られやすい。どちらに車が曲がってゆくのかわからない。
　これが凍りつくと、今度は轍のお気に召すまま、車はジェットコースター状態となって右に左に振られ、最悪のコントロール不能状態の道路となるのだ。
　やはり除雪はきちんとして、最後の削りの部分を、アスファルトに届くほどではなく、うっすらと圧雪状態を保ったままに終えて欲しい。スタッドレスタイヤでは、圧雪が一番走りやすい。道北の牧場地帯などは、冬にはほとんど圧雪なので、とても快適に走ることができる。でも札幌の街なかのつるつる路面は、最悪だ。
　帰りには氷が解けて、乾いた路面が露出していた。でも、交差点の氷は執拗に路面にへばりついており、そういう場所では注意を要する。乾いた路面を夏のように快適に走り、交差点が近づくと、びびる。
　高速に乗って、除雪車らしき車を追い越した瞬間、パラペラム弾を食らったような痺れがあった。除雪車ではなく、散布車であり、なにを撒いているかというと、それは粒状の解氷剤なのであった。いわゆる塩である。これが車を錆びさせるから、北海道仕様の車は底面に独特のプラスティックカバーが付いている。新雪や雪の段差を走り、このカバーがぐしゃぐしゃにひしゃげて走行の邪魔をしたことが一度ならずあった。この世に完璧なものなどないのだ。
　鉄を錆びさせる解氷剤を浴びて、くそっ、車が傷む、と嫌な気分になったが、夕焼けに染まる道央道を快適に飛ばしていたぼくは、車が社有車であることを思い出して、急にどうでもよくなった。せっかくだから、この解氷剤には目一杯活躍していただき、高速道路を極力、夏道と変わりのない、乾いた快適な状態に保ってもらいたいと思ってしまった。
　それにしても毎日毎日つるつるぴかぴかの道路を車通勤。これをおよそ最低でも三ヶ月。神経が磨り減るとは、こういうことを言うのだ。
　春になって雪解けを迎えると、多くの若者が溜めこんでいたエネルギーを路上に求めて、子供や老人たちをはねて殺し、自分は刑務所で人生の早期段階を駄目にしてゆく。凍った路面が、冬を物語り、春がストレスを解放させて、一気に殺人者を路上に送り込む。交通事故死者日本一という北海道。そう、北海道の道路は年間を通して恐ろしいのであった。