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花村萬月『王国記』

 のブックレビューで、ぼくは、こう書いている。

ゲルマニウムの夜』に続く『王国記』という中短編小説群こそ、萬月の自伝でありライフワークであると確信していたのだが、施設時代、少年時代を題材にしたこの小説群も原風景から少しずつスライドしつつある違和感を感じ始めていた。小説世界が独自に膨らみ続け、奇怪な成長を遂げ、主人公以上に、周辺の人物たちが個性を持って歩き始め、全体では群像小説のような気配を身に纏い始めている。だからこそ……(後略)

 昨日作者の日記HPでは『王国記』の次作書き始めの前に、こう書かれていた。

うまく逸脱できなければ、長篇小説は失敗だ。

 さすが。花村萬月の小説世界を一言で物語っている。自分を知る作家だから、凄い、と常々思っている。徹底して自分に向かい合い、自分をさらけ出す覚悟、というようなものがなければ、小説家になるべきではない、というようなことを小説入門講座のようなところで書いていた。ふにゃふにゃくらげのようでいて、飽くまで一貫、これが萬月。ああ、愉しい。