蕎麦屋

　蕎麦屋が本気になると凄いものだなあと思い知らされた。たまたま宴会をやろうと思った寿司屋が定休日なので、どうしようかと慌てて探し出した蕎麦屋で四千円飲み放題コース。その内容が凄まじく質量ともに優れものだったのだ。すすきのの居酒屋での庶民における平均的宴会価格だと思うのだが、蕎麦屋が本気でこうした勝負をすると、満足度は居酒屋どころのものではないのだった。
　イクラ、タコザンギ、鮭のハラスの揚げ物と小鉢から始まって、白身魚の南蛮揚げ、鶏と鮭と海老の寄せ鍋、刺身はマグロ・ホタテ・ツブ、ラクヨウキノコのおろし合え、鶏肉のクリームソースかけサラダ、天ぷらと続いて、蕎麦に握り寿司にボタンエビ・イカ・ベニジャケが付いてくる。どれもが蕎麦屋の基本の美味さに、西洋中華の技術を加えて、バランスよく出てくるのだが、急いでどんどんというのでもなく、適度な間があって、会話もゆったりできる。これは安いし、ボリュームがあるし、実に美味い。
　東区の北光通り沿いにある＜更科本店＞という店である。難を言えば交通の便が悪く、ぼくは車で往き来するためにせっかくの飲み放題を、烏龍茶ばかりお代わりしたという点。その気になればコーラやトマトジュースも可だし、ノンアルコールビールもあるけれど、後者は厳密に言えば0.5％か0.9%のものであり、「ノン」アルコールではないのである。
　今度は代行を頼んでここでじっくり呑んでしまおうか。ブリかまでもつつきながら日本酒でも。