塩ラーメン
函館と言えば酔った宵にはぼくは塩ラーメンで終える。独りふらりと立ち寄った場末の店には客は誰もいなくって、おばあちゃんが独りで切り盛りしていた。一対一でカウンターを挟んで塩ラーメンを啜り、今では珍しいサッポロの赤星ビールを飲む。ふるさと談義で話がはずんでいたが、水商売が引ける時刻になって世にも恐ろしいおばさんたちが客と一緒にやってきてカウンターはすぐにいっぱいになった。大瓶二本で引き揚げることにする。歴史を感じさせる街。その夜にひっそりと働くラーメン屋のおばあちゃん。三十九年。ずっとここでラーメンを作っているのだそうだ。昔はきらきらと眩しいくらいに店が沢山あったのだそうだ。暖簾をくぐって外に出ると、真っ暗な闇しかそこにはなかった。