『月新聞』

　息子の夏休みは明日で終わりなのだそうだ。北海道の小学生は夏休みが短いのだ。
　というわけで毎年恒例の夏休みの宿題自由研究に忙しい日曜日である。結局今年は、何度も観察してきた月の動きを絵に書いて、これを壁新聞にしてしまおうということになったようだ。今日は『月新聞』というものが出来上がりつつある。周りを黄色く囲った壁新聞だ。
　そう言えばぼくが小学四年のとき部活動で新聞部に入った。土曜日の放課後にお弁当を食べてから壁新聞を作り出すのだが、一番嬉しかったのはタヌマヒロミちゃんと同じ部になったこと、一緒に壁新聞を作れるということだった。タヌマヒロミちゃんはぼくの初恋の人だったがもちろん心の中でひとり悶々と抱え込んでいた恋心である。ところが新聞部を初めて間もなく彼女は家の都合で隣県に転校してしまうことになった。ぼくは壁新聞を見るたびにタヌマヒロミちゃんの転校先での新しい生活を想像しては、さらに悶々とつらい思いに駆られていたのだった。