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豊平川花火大会

 札幌で七年目になるのに、札幌の夏の風物詩である豊平川花火大会に一度も出かけていないのは何故だろう。しかも七月末、三週連続金曜日の夜に大々的に行われるから都合十八回ほどもチャンスを逃しているのだ。大通り公園のビアガーデンで呑みながらだらだらと眺めた(見えたというべきか)という記憶はあるけれども、河川敷に出かけてちゃんと花火見物というのをやったことがない。それでも札幌市民といえるだろうか?
 よく考えたら昨年までの職場は七月が会計年度の期末に当たっていて嘘みたいに忙しかったのだ。だから行っていないのだ。ではなぜ大通り公園でビールを呑みながら花火大会を眺めていたのだろうと考えると、理由はよりあやふやになる。
 とにかくそうしたわけで今年は家族揃って豊平川の河川敷にきちんと花火見学に出かけた。往きの地下鉄は増発されているのか、前が詰まって停車ばかりするし、車内は平日午後六時の山の手線なみに混雑した。札幌市民はこういうラッシュに馴れていないので車内は大騒ぎだ。しかも車内人口の四分の一は浴衣姿の若いお姉さんたち。三分の一くらいは汚い格好のお兄さんたちで、残りが家族連れってところかな。とにかく皆が皆花火大会を目指している目つきであることがわかる。
 中島公園で半分以上下車し、その次の幌平橋で残るほとんどが下車したが、ぼくらは川の対岸の中ノ島駅まで進んで下車。風が南東から北西へ吹くので、風上から見ようということになったのだ。中ノ島での見学は正解だった。少し歩いて、打ち上げ場所も川面も見える河川敷に腰をおろすと、花火大会をほぼすっかり全部見ることができた。
 花火大会と言えば何年も前の和歌山県湯浅の港での花火を夫婦で(まだその頃息子は生まれてなかった)見て以来だ。関口苑生氏に誘われ、作家や評論家たちと海水浴に行ったときの夜。随分昔だ。
 だからこうしてきちんとした花火を座って見るというのは久々。息子にとっては洞爺湖温泉の湖面サービス花火以外のきちんとした花火大会は初体験だと思う。
 昔、入谷の台東小学校や浅草小学校で警備のバイトをしていたときには、下町は高い建物が少ないので隅田川花火大会を小学校の屋上特等席で眺めたことがある。一人で見たところで少しも楽しくなかったが、それでもやはり大玉の花火が復活した年にはいやに美しかったのを覚えている。
 今夜の花火は夏なのに納涼というよりは耐寒という文字の似合うような寒い夜の花火大会だったが、それこそ札幌らしいといえるのかもしれない。何よりも三人で身を寄せ合って、夜空に惜しみなく舞い上がる花火を見上げていると、それだけでじーんと、美しい、豪勢だ、気持ちがいい、と素直に肯定的に思えるのだった。
 花火大会に効能書きというのはついていないけれど、それは書いて表現するのが大変に難しいからなのではないか、と花火の音を聴き、光を見つめながら、少しだけ思ったりした。花火を見る角度もそれぞれ人によって違うのだということも。ニャンコ玉もドラエモン玉も方角が違うものはただの光の破裂にしか見えないが、きちんとこちらを向いて夜空に膨らんでくれると、花火作者の意図通りに歓声を挙げ、拍手をしたりするのだった。