ベテラン作家
ベテラン作家になると改行が多くなるというイメージはないだろうか。
馳星周『生誕祭』を読み始め、とうとう上下巻になったか、出すたびにどんどん分厚くなるなあと思ったのだが、実は改行が増えている気がする。
夢枕獏の改行の多さというのは許しがたいものがあるのだけれど、そういう改行の多さを逆に喜ぶ読者層を目指して書いているうちに、平均を相当に逸脱してしまったのだと思う。多作家の功罪だ。
やはりいい作品を書く作家は一年に一作というペースが当たり前だ。いい作家は一年に一作でも十分に稼げるし、そのペースがよりよい作品を翌年に生んでゆく。多作家であったり、他にエッセイやTV出演など創作外の仕事を沢山引き受ける作家は、その点本業の創作のほうにしわよせが来る。馳星周もサッカー評論家ではないのだから、本業に専念していただければと思う。
もはや一年に一作も書かなくなってしまった東直己はTVレギュラーなど持つべきではない。
そうは言うものの、書くという作業はしんどいことだし、ある程度印税が稼げるようになれば、他の仕事で楽に食べてゆきたいというのもわからないではないのだけれど、読者としてはやはり許したくないところなのだ。
船戸与一という作家は、その点非常に偉い! ディック・フランシスは断筆したのだが、やはり長い年月に渡ってそのペースを守り、フランシスというブランドを守ったということに関しては瞠目ものなのである。