噛み合わせ
読書が進まない。打海文三『ハルビン・カフェ』が思いのほか難物なのだ。たいていの難物はこなせるつもりなのだが、入り組んだプロットの上に、敢えて伏せておいた事実をずっと後のほうで明らかにしてゆく事実があまりに多いというこの小説の意地悪な構成に翻弄されている。
要するに、難物である作品と読書時間の減少が重なって、いささか噛み合わせが悪いような一週間となってしまったのだ。
ちょうど同じタイミングで体調を崩し、喉をやられてしまった。これは周りにも同じような人を多く見かけるので、きっと札幌の今時分の温度変化の激しさのせいだろうと思う。
そういういろいろな歯車の噛み合わせが悪くなってぎしぎしと音を立ててゆくような感覚。こんなに好きな読書という趣味にも急激に歯止めがかかることはあるのだ。
そう言えば札幌に転勤を命じられて慌ただしかった数ヶ月、一ヶ月に一冊しか読めなかった頃があったものだった。読書は常に生活の側の安定を求める。生活の急激な変化や一時的な多忙は、たいてい読書に向かう時間や余裕を産み出してくれない。
本を読むスピードや読書量というのは、ぼくの場合には、情緒のバロメーターみたいなものなのである。