遠い敗北
なぜ、川崎に出かけなかったんだろう? 友達が車でゆくって言ってるんだから、普通なら同乗させて、って言うところ、チケット購入の話に振り向きもしなかった。
自宅近所は祭りの夜なので、夜更けまで笛や太鼓の音で騒がしいはず。なので、ジンギスカンの材料を買い込んで、窓をぴしゃりと閉め、冷房をきかせながら、ホットプレートとテレビのスイッチを同時に入れる。
信じられないような何もできない浦和レッズの姿を見て、思った。なぜこの川崎にぼくはいないんだろう。さして遠くもない場所なのに、ゆく気配さえ起こさなかった自分の中に、見てはいけない、というようなインスピレーションのような何かが生じたとしか思えない。
行かなくてよかった。お前が応援すれば勝てたかもしれないなんて声も予想できるけど、でもやっぱり被害最小限でよかったよ。神輿を組み立てた夜は、ジンギスカンとビールが美味しいのだ。窓を開けると一気に祭りの喧騒が戻り、浦和レッズの悪夢はぼくの世界から消え失せた。