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映画『遺体 明日への十日間』

 3・11から二年。震災の日ということで、この映画を観ねばと考えていた。かつて災害医療関連の仕事に身を投じていたこともあり、自分の人生に関わりのないことでは決してないと思った。
 作りものであって、作りものでない世界がスクリーンにあった。音楽がほとんどなく、背景にはパトカーのサイレンの音ばかりが響いている。何日も何日も遺体が運び入れられる遺体安置所を舞台にした10日間。実際には二ヶ月後に閉鎖になったという釜石市の安置所だけが舞台である。
 地震前の日常が、3月11日14時46分という震災の時刻を契機に切り分けられた。
 派手な描写も津波の映像も効果音もない。ドキュメントの手法で描かれる被災地の人々の姿だけが描かれる。救いのない世界のなかで心を熱くさせるのは遺体や遺族に向き合う人々の姿だ。
 観るのが辛い映画であり、どのご遺体にも物語がぎっしり詰まっていて、それぞれが不十分なまま送られてゆかざるを得ない状況と、その後まだまだ終わらない現在につながる真実の物語が、あまりに心をゆするので、はっきり言って終始涙が出てやまない映画である。どうしようもない。
 しかし、観てよかった映画である。これゆえに、次に同じような悲劇が起こった場合、悲劇に向き合う人たちはその方法が与えられるだろう。
 災害には心のケアが必要である、ということが、日本でも災害が重なるに連れ徐々に重視されてきている。報道では移されることのなかったご遺体や、遺族の心の問題、そのケアの様子、などが克明に描かれた映画である。
 作られねばならなかった映画であり、少しでも多くの人に知ってもらいたいことがいっぱい詰まっている。是非、劇場に足を運んでみて、この耐え難い事実にこそ、向き合って見ていただきたく、思ってやまない。

映画『遺体 明日への十日間』公式サイト