黄昏ウォーカー
中山道から南銀に折れる。昔、何本も映画を見た大宮オリンピア劇場は、今はなく、居酒屋チェーンに代わっている。そのまま駅前を通りすぎ、「押田謙文堂」や大栄橋の下の「埼玉スポーツ」(中学校の卓球部時代にだいぶ世話になった)などが健在であることを確認してから、西口に渡り返す。
ソニックシティを中心とした近代的なランドマークの周りには蔦の這う教会や、古い木造の建物がアンバランスに残されている。
古いままの昔の道路を伝って17号に出るあたりに、老舗仏具店があるので、ここで線香と蝋燭立てを買ってポケットに突っ込んだ。
新都心まで歩くと、ゴールは目の前なのだ、タリーズでコーヒーを飲みながら本を読む。
ふたたび歩き出すと、夕陽は早くも沈もうとしていた。新都心から南に続く回廊をゆくと、西の地平に、落日と、富士のシルエットが輝いていた。眼を射抜くばかりの印象的な光景に、立ち止まる。
地球は、寒気のなかで震える歩行者に、とても優しく一瞬の微笑みを見せてくれる。