シュンの日記なページ

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キプ・ランチ

 朝方から激しい風雨。大丈夫かな、と心配するぼくとは対照的に、ぼくの尻を叩く妻。少し尊敬した。
 7時くらいにならないと夜の明けない異国の朝である。
 リフェに向かう道路は通勤時間帯なのか、闇の中にテールライトのドットラインとなって連なっていた。そこをある地点で右方向に曲がる。そこからはっ昨日、夕焼けがきれいだった牧草地の道。
 キプ・ランチに着いても雨は降り止まず。
 でも早口の英語のほとんどを解すことのできないまま、今日のインストラクター、20代くらいの若者トロイの導くまま、ツアーはスタートする。支給されたバンダナで口から鼻まで覆うように言われ、トロイからはヘルメットとゴーグルを渡され、きつくそいつを締める。
 カワサキ製の4輪バギーに乗り込むと、操作方法を教えられ、庭先で三周ほど練習してから、いよいよコースに出る。助手席に妻も同じようないでたちで乗っている。
 心配をよそに、牧場に出ると、瞬く間に霧が晴れて、青空が顔を出し始め、その合間から迫力ある山の稜線が見えてきた。雨も上がってきた気配である。


 トロイが車を止め、シャッターを押してくれる。それから英語でこの島やランチの歴史を説明してくれた。大枠しかわからないが、昔、ライス一族が、多くの移民を、中でも日本人移民を多く使ってサトウキビ畑を大規模に展開してきたこと。砂糖工場がサウスショアのワイメアに残っていたことを思い出す。
 牧場のゲートにぶつかるたびにトロイが開け閉めしてくれる。広々とした、普通なら通行禁止区域であり、歩いたらとても大変な距離だが、4輪バギーならではの独特のコース取りがなかなか楽しい。
 スリップの危険のある難所が出てきた。下り方のデモンストレーションを行って運転のコツを教えてくれる。ブレーキを最大限に利かせて難所を越えると、牧場をいったん離れ、二台のバギーはとても展望のよい高台にストップする。リフェの港に続く海が見える。山も高原もとても広大なスケールで広がっており、雲も去り、陽が射したところで、トロイがグアバジュースやクッキーをふるまってくれる。ピクニック気分だ。


 いったん川に下る。美しい水をたたえた緑の中の川。
 トロイは「午後にはここに飛び込んで泳いで遊ぶんだ。君は、どうだい、このロープを使ってダイブしてみないかい?」 と言われ、「おーのー!」とジェスチャー混じりに震えおののく。

 「さあ、これから山の一番高いところに向かうぞ。道は、いいけれどガードレールは一切ないので、注意してゆっくり行こうぜ」
 トロイの案内で、ぼくらはどんどん高みを目指して登ってゆく。晴れていないと行かないコースらしい。
 ローギアに入れて登り切ると、いつの間にか峠に立っていた。峠の向こうに、農園主のプライベート・ビーチが見渡せる。ビュー・ポイントとはここのことを言うんだろう。木の間越しに海辺を見下ろす。
 「ここがぼくの一番好きな場所なんだ」トロイが自慢げに話す。秘密の場所を教えてあげたんだぜ、とでも言わんばかりに。

 トロイは、時々バギーを止めて、木の実を摘んでは食べさせてくれる。グァバの実は種が多くて食べにくかった。オレンジは美味しかったな。

 写真は野性のコーヒーの実だが、こいつは食べられないし、ローストしないと香りも出ない。妻のコートは泥はねでひどい状態になったが、彼女はあまり意に介せず泥遊びを喜んでいる様子であった。また少し尊敬した。

 植物園みたいにも楽しめるのだが、実は、孔雀がいたり、馬が走っていたり、野豚が隙を伺っていたり、当然牧場なので牛もいっぱいいたり、鳥もいろいろ、と、動物園としても楽しめたりする。
 3時間強のけっこうなかなかのツアーであった。トロイ君、本当に有難う。