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crimewave2012-06-04

 久しぶりに『Z』を観た。LDで持っているが、少し前にWOWOWで放映していたので、高画質で録画しておいた。
 人生で5回目くらいになる『Z』だが、最初にこれを観たのは、確かテアトル新宿というマイナーな映画館。少しませた友達の滝君と二人で電車を乗り継いで大都会新宿に出て、映画を観て帰るという大冒険だった。上映はマーロン・ブランド主演の『ケマダの闘い』との二本立てだった。どちらも政治色の強い映画であり、バイオレンスが主役であり、強烈なそうした世界悪に対するメッセージ性の強いものであった。中学生の感受性にとってはとても強烈なものであった。

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 なぜ『Z』を観たいと思ったのか。それは深夜放送を始めとしたラジオ文化がもたらしたものである。ミキス・テオドラキスの『Zのテーマ』という映画音楽が、ラジオの音楽チャートでリクエスト第一位にしばしとどまったのである。あまり聞いたことのない迫力のあるリズミカルな主題歌に魅せられ、ぼくはシングル・レコードを買い、何度もそいつにレコード針を走らせた。
 次に、ヴァシリス・ヴァシリコスの原作本『Z』を買い、読み込んだ。ぼくはいつの間にか『Z』の世界にのめり込み、『Z』オタクとなっていたのだ。そういう助走を整えて、テアトル新宿だ。『Z』は期待にたがわぬドキドキ映画であり、原作本にとても忠実だった。
 当時軍事政権下で暗殺が国家指示のもとに行われていたギリシアという国を追われフランスに亡命した映画作家が、フランスとアルジェリア共同で撮った映画がこの『Z』である。
 人生のあらゆるポイントで5度ほど観たけれど、決して古びることのないこの映画の素晴らしさは監督の腕に負うところが多いと思う。
 あの時代、世界は遅れており、人は迫害され理不尽がまかり通る中、コスタ・ガブラスという監督は『Z』に続き、『戒厳令』『告白』とイヴ・モンタン主演三部作を世に送る。どれもが実在の事件に酷似したメッセージ性の強い作品で、確かイヴ・モンタンはノー・ギャラでこれらの映画に主演したのだったと思う。すべてが衝撃だった。


 『Z』も『ケマダの闘い』も、どちらも大スターを登用しているにも関わらず、メジャーではあまり取り上げられることがない。日の当たらない名画としてその存在感はすさまじいものがある。今夜、睡眠時間を犠牲にしてでもこの映画を観返してみたのだが、完成度の高さには改めて瞠目すべきものがある。奇抜さが映画の主軸に思われる現在、低予算であれ、時代を切り取る鋭利なジャックナイフのような存在感を示したこの種の映画を、一映画ファンとしては、ぜひ、見直して頂きたいものである。