幸運の女神
朝、会社の前で、女の人が会釈をする。はて、誰だったろう。すらっとした美人である。
よく考えてみると、一月の一ヶ月の間だけ来てくれていた派遣社員であった。長い髪を切ってショートカットになっていたので、すぐにわからなかった。明日もどこかに通勤してゆくのだろうし、同じ時間に、ぼくは正面玄関に箒をかけている当番なので、また明日、今度はしっかりとこちらも挨拶をしよう。
この派遣さんは、実は二度も大きな商談につながるきっかけとなる電話を受けたということで、幸運の女神なのではないかという噂になった人だった。年に何度もさほど期待値の高い電話がかかることはないのに、一ヶ月の間に二度も、ということで社内では密かに話題になった人だったのだ。
さらに、今日のめざましTVの占いではやぎ座は最悪の運勢であり、対策としては机の下の荷物を綺麗に整理することとなっていたのに対し、実はやぎ座のぼくは、昨日、日曜出勤して、まさにその机の下の荷物の整理をしたばかりだったのだ。
世の中には不思議な偶然というものが多々存在するものなのだなあ。