夜は風の音のうちに
やれやれ。ようやく葬儀が終わり、母は荼毘にふされ、白い骨となった。
大宮聖苑という火葬場への道は両側が緑濃く美しく、静寂に満ちていた。霊柩車の助手席で位牌を持ちながら、雨の中を走る車の中で、運転手さんに、とても美しい道ですね、と聴いた。そうですね、右側も後から買収したんですよ、それで右手も公園にすることができたので、こういう風景になりました。
火葬場の建物内はどこを歩いても、水に囲まれた古代遺跡のような重厚感のある赴きの建築物であった。母がこうした素晴らしい場所で骨になってゆくのだと思うと、ほっとする感がある。
骨になり、今、隣室で、仏壇とともに並び、香を焚かれている。
今日は思いがけぬ友人知人が参葬くださり、少しじんと来てしまった。有難いなと心から思える。母は嬉しがっていることだろう。
葬儀の後、息子と一緒に、母の家に仏壇を取りに出かけると、Oさんが修繕清掃作業をさらに進めており、驚かされた。
仏壇を持ち帰り、息子と一緒に清拭して、狭い階段を運び込む。
夜には妻の実家で妻の料理を久しぶりに食べる。キンピラの作り方を教わり、ビールやスパークリングワインを口にした。どっと疲労が出た。
何本も何本も母の遺骨に線香をあげた。妻も、我が子も。夜は風の音のうちに更けていった。