果実たちの色
「枝を抑えてろ、今、もいでやる」と言って、柿の実を落としてくれた。いくつもいくつも。それから伊予柑と柚子の実をいっぱい。
「待ってろ、ビニール袋に入れてやっから」
さいたまにはたまにこういう優しい爺さんがいる。息子が勤めに出て、農家を継ぐでもなく、孫も作らず、孤独な日々を強いられているゆえに、人に餓え、人に優しいのだろうか。
苦労がその分だけ皺になって、笑顔に深みを与えている。
そんな爺さんの庭からやってきた果実たちが、こうして鮮やかだ。
この倍くらいもらってきたのだけれど、配ってしまって量は減った。でもこれだけカラフルな果実がぼくの部屋にやってきた。ありがたくて涙が出そうだよ。