悲観的で疑惑に満ちた駅アナウンスのこと
電車を降りて南浦和で始発に乗り換える。座って本を読んで通勤するためだ。
すると車内放送。今さっき出たばかりの駅で人身事故が発生し、しばらく見通しが立たないので、武蔵野線で埼京線に移動しろというのだ。一本かニ本遅い電車に乗っていれば、まさに事故に遭遇してしまったのかもしれなかった。
しかし、ぼくの場合、こういうときは動かないのが得策と考えるタイプである。当分見通しが立たないと悲観的なアナウンスを裏切って、大抵は電車は普通に動き始めてしまうのだ。あれは事故現場関連のダイヤを調整しやすいようにダイヤグラムを調整している人たちが乗客を他のルートに誘導しているんじゃないかと、ぼくは密かに疑っている。
まさにこの日も上下線ともしばらく動かないというアナウンスを尻目に、一本、また一本と電車が走り始める。それでもなお、アナウンスは、「今走り始めた電車は隣の駅まで行ってしばらく止まりますので、武蔵野線で……」と誘導は続く。隣の駅で止まっているなら、なぜ次の電車が走り始めるのだ。
そうしてぼくが無事座席に居場所を確保していた電車も走り始める。ちゃんと隣駅どころか、どこの駅にも止まらず、しっかり目的地に着いてしまった。25分の遅れです、すみません。みたいなアナウンスが流れているが、すみませんは、嘘をついてすみません、じゃないのか、というのがぼくの意見である。