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いかれた女を殺せ

 ジャン・パトリック・マンシェット『愚者が出てくる、城塞が見える』読了。

 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える (光文社古典新訳文庫)

 中条昌平が岡村孝訳の『狼がきた、城へ逃げろ』を誤訳として、自分がもっとマンシェットの雰囲気をとペンを執りなおし訳したのだそうだが、見た限りでは、訳者なんていうレベルではなくマンシェットのラディカルなパワーしか感じることができなかった。他者訳のタイトルを批判しながら「愚者」を「あほ」と読ませたり「城塞」を「おしろ」と読ませたり、いかにランボオ中原中也訳をイメージしたからと言ってマンシェットをわがものにしたというのは、傲慢に過ぎる。だからフランス語の専門家は嫌いだ(元フランス語専攻の嘆き)。
 とは言え、この本がマルレーヌ・ジョベール(あの『雨の訪問者』のヒロインですね)の主役、セバスチャン・ジャプリゾ脚色で映画化されていることは知らなかった。訳者が酷評しているが、見ていない人間にそんなことを言うな、解説で! とは言え日本未放映の映画だからどっちでもいいか。『いかれた女を殺せ』というこの訳者が勝手につけた未邦訳映画タイトルは、むしろ岡村孝訳だと思うんだけど。