記憶を失う
昨日の夜のことはあまり覚えていない。帰りにセブンイレブンに立ち寄って、何かを仕入れてきたらしいことは、冷蔵庫を覗けばわかる。食べかけのチキンかつとペンネ、冷凍庫にはアイスクリームが二個入っていた。
記憶を失うことはぼくはどんなに呑んだ夜でもまずない。つまり昨夜が初体験といっていいほどである。
朝起きると、頭痛。宿酔いの頭痛ではないと思う。体が熱い。熱っぽい。風邪、みたいだ。先週の頭の怪我の影響が気になる。午前を休んだ。
午後、会社には出たけれど、頭痛はずっと残り、夜に宴会が入っていたけれど、烏龍茶を飲んでごまかした。終るとまっすぐ家へ。冷蔵庫の中身をチェックしたのはその後のことだ。うっすらと記憶にはあるけれど、冷蔵庫を開けるまで、昨日の夜何かを買って帰って、何かを食べたことなどは全然覚えていなかった。
ボケたり、何かが痺れたりしたら、血腫の疑いがあるから病院に来るようにと、先週の救急外来受信の折に渡された注意書きに書かれており、ぼくはそれに改めて脅えあがる。
今日は風邪というだけで済ませたけれど、初めて記憶を失くしたことは告げていないではないか。
少し様子を見て、まだ日常から逸脱しそうな気配があれば、また病院に行こう。
そう言えば今日、香納諒一『記念日』読了。記憶を失った青年の物語だ。国際的で、純日本人じゃない人が主役なのだが、舞台はすべて東京周辺のリアルな場所。記憶喪失やマインドコントロールや催眠などといった、どちらかと言えば松岡圭介あたりが得意な題材に冒険小説畑の作家が挑んでみたら、どっちつかずの作品になってしまったと見るべきかもしれない。ステップはSF的な作品だったし、最近クロスオーバーを目指しているのだろうか。脱皮を図ろうとしているのだろうか。『血の冠』を読み始める。うん、こちらは純然たる警察小説。感触がいいぞ。あまりクロスオーバーしない古臭いタイプのほうがぼくは好みであるみたいだ。