シュンの日記なページ

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一瞬なる屋台

 松前の朝は凍りついている。

 

 何せ、みうら旅館を出ると、目の前に空。もちろん道路が一本横切るだけで、ガードレールの向うは日本海だ。津軽海峡の西の端っこ。

 

 白神岬で、荒波を撮る。何度来てもここはいつでも荒波。木古内で訪ねたら、松前は風で雪が飛んじゃうんだよねとの話だった。福島・知内・木古内は大千軒岳があるせいか雪深いんだ、ですと。

 雪を飛ばしてしまう風は、波も高々と持ち上げるというわけか。いつ見ても東映映画の序幕みたいで、素晴らしい岩礁だらけの白神岬。

 

 夜、函館入り。屋台村「大門横丁」の夜もあと一つ? 二つ? 寂しいなあ。

 行きつけの屋台は、「あっそ家」。芋焼酎黒きりの二杯目を頼んだら、ごめん、ちょっと待って、先にトイレ! とママ。ならば、連れションだと一緒に外に出る。屋台村の真ん中に共同トイレがあるのだ。ママに手をぎゅっと握られて大門横丁を行進する。恥ずかしいなあ。着物に割烹着の台所姿ママと、ネクタイ・スーツ姿の親父が手を繋ぐか、普通? ママは、ぼくの「いっこ下」だ。ああ、妻を含めても、女の子と手を繋いで歩くなんて何年ぶりだろう、と思うと、プラス思考というのだろうか、何となく嬉しいこと、ありがたいことのように思えてきて、店に帰るとさらにアルコールが進んだ。
 この日は、最初にあっそ家にきたときに最初にお話をすることになった85歳の先輩(亡き父と同世代)が今なお綺麗な奥さん連れでやってきていたのだ。そして常連のAさんも当然いるのだ。この人は、ぼくの死んだ弟と同じ年なので、いつも兄弟のようにぼくは隣に座り、本当の兄弟のように、喋らずにビールを飲み、二人でときどき思い出したように一言を話して笑顔を交わしたかと思うと、また黙る。とても居心地のいい関係である。ママの90歳の母やママの姉もやって来る。ああ、こんな風に函館の店ともお別れか。

 


 酔っ払い三人衆が隣に座る。何かの拍子に「お前」と言われたので、「お前?」と聴き返した。すぐに謝ってきた。少し尖がってしまった。三人は急に親しげな態度を見せ始める。出張であちこちに行くんですか? どこにもこういう馴染みの店があるんですか? そんな質問を受ける。うん、これまではね、と答える。でも二月からは東京なんです。
 ママの姉のつれである宝塚女優みたいな上司に難破されそうになった。来週、いつ来るの? 約束しよう。オヤジギャグ連発の宝塚女優。指差して、オヤジ! と言って店を後にした。馬鹿げていて楽しい。一瞬なる、屋台よ。