ススキノ最短滞在記録
ススキノでの飲食を目的に出かけてこれほど早くススキノを離れたというのは自分史的には記録ものだと思う。
会社の送別会。一旦家に帰って車を置き、いつもより風が冷たく、まだ冬かと思わせる寒さの中、じっと震えながらバスを待ち、地下鉄に乗り継いでほっと息を吐く。
若者が幹事をやったために安価だがちょっとしつこいかなと思うくらい、出てくる料理の傾向が偏っている手羽先唐揚の専門店に辿り着く。
二つに分かれたテーブルの一方に若手が、一方に中年以上が集まってしまい、一方は盛り上がり、一方では非常に事務的に出てきた料理を突いては飲み物を口に運ぶという静けさ。このコントラストを自分らで作り、盛り上がった方に行きたいとは露とも思わず、飲み放題時間の時間切れを店員が告げてくれるのをひたすら待つ。
特に欲しかったものではない料理で腹をいっぱいにしてしまわなければ、せっかくススキノに出てきたのだからどこか二軒目の店に独りでしけこみたい。
しかし終了とともに二次会にゆく若手、解散する中年上の組と自然になりゆき、地下鉄にそそくさと足を運ぶ。いつもの地元行きつけの店にでも、と思うが腹を撫でて満腹の持って行き場を失くしたまま、バスに乗り込み、ごくごく健康的に帰宅した。
こんなにススキノに短い時間だけを滞在したのはかつてなかったろう、と後で思い起こす。
『ベスト・アメリカン・ミステリ アイデンティティ・クラブ』読了。純文学畑のジョイス・キャロル・オーツがゲスト編集者であるためだろう、起承転結や娯楽性に乏しいが文学性の高い傾向の短編集が集まったという印象を受ける。ミステリという点に拘らなければ上質のアンソロジーと言い切れるのだけど……。