シュンの日記なページ

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重慶のベビーフェイスたち

 プロレスだな、と思った。
 サッカー東アジア選手権の話。レフェリングはまるで懐かしきジョー樋口だった。中国チームは反則まみれの極悪ヒールチームで、日本チームはまるで力道山。絶えに耐えて繰り出す空手チョップが駒野のクロスと山瀬のゴールだった。潰れ役の田代は、大木金太郎吉村道明ってところか。本当に、中国では戦後のプロレスが実践されちゃうんだ。日本人は全員がプロレスのベビーフェイス役に徹していた。一瞬鈴木啓太の顔に、セメントに持ち込んでやろうかと言う本気が走ったけれども。
 そんなサッカーを函館湯ノ川温泉のホテルの一室で見る。出張先である。酒を呑み、部屋食をご飯以外ほとんど平らげて、サッカーが終ると、雪が舞い始めた温泉街に出る。夜には川っぷちに移動してくる函館バスラーメンが、ぼくの函館での定番行動の一つだ。

 

 バスの中は、若い人たちでいっぱいだったから、外で海風に耐えながらじっと待っていると、次々と若い人たちがやってきた。全員中国語を話している。サッカーを見終わったほど悲惨な顔をしていないのだが、バスに入ってから、店のおばちゃんが台湾の人たちだというので何となく合点がいった。台湾と中国は別の国だから関係ないのだろう。でも完全な合点とは行かないところが、私の彼らの心情への不理解への証左だ。居心地が悪い。
 台湾の綺麗な女の子が、精算のときに狭いバス内で少しだけぼくの背に触れた。「すみません」と彼女は日本語でわぼくに謝罪する。気持ちのこもった謝罪に、こちらが面食らった。
 中国でピッチに投げ入れられたペットボトルや、安田が喰らった中国ゴールキーパーの飛び蹴りとは、あまりにも対照的な礼儀正しさに、まだサッカー日中戦の余韻が残るぼくの頭が着いてゆけず、当惑した、というのが正しい。
 国際都市、函館。少し前までは見かけなかった中国語のメニューがひときわ目立つ。
 「この餃子は日本人のお客さん」とおばちゃんがおじちゃんに言う。そう、ぼくはバスの中で唯一の日本人客であったのだ。