シュンの日記なページ

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柿の実を落とす日

 北浦和バス停から実家に向かう。独り暮らしの母の家の大掃除だ。

 途中下車して、母が脳卒中で倒れた頃、看病に通った病院に立ち寄る。その後も、車椅子を積んで何度も通った病院である。ちょっと懐かしい苦労話である。あの頃は新婚で、妻にも苦労をかけた。

 コンビニがあったので母の分と自分の分のお握りを買い、今日は実家の掃除をするので、軍手やゴミ袋も一緒に買う。

 自分が中学高校と住んでいた家は、今では古びて小さく、あばら家のようだ。周囲の家も同様に古びていて、代替わりしたところだけが改築されて、それらしい。

 母と再会し、きりのない話に肯きながら、お握りを食べる。午後にはヘルパーさんとケアマネさんが来てくれて、掃除を手伝ってくれた。母は捨てられない症候群なのだ。とにかく服だらけだ。一枚一枚これを捨てていいかい? と訪ねると、母はこれはお前が小学生の頃にパートで働いたお金で買った服だ、これはお父さんが勤め先の衣料品工場でもらってきた服だ、などと思い出話に浸ってしまうので、作業が捗らなかった。

 庭になっている柿を食べたいと母が言うので、棒を使ってもいであげた。枝ごと、こうして落として齧るうちの柿は、とても甘くて美味しいのだっけ。昔はよく食べた。今日は二つしか落とせなかったから、母に残してゆく。少し齧りたかったのだけれど。

 夜、友達の家に移動。我が家には寝泊りするスペースすらないので、母には別れを告げる。ラーメンでも取ろうと思っていたのに、と母が言う。ラーメンかよ、と思いながらその質素さに少し心を打たれる。81歳になる母。弟が死んで、父が死んで、あの頃の四人家族はもう母とぼくだけである。ぼくは札幌で新しい三人家族を作って生きている。こうして歴史は流れて、人は老い、別れてゆくのである。誰にもある話なのだろうけれど、どこか徹底して切ない気がする。