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猫の記憶

 何故か雷鳴。雨が冷たいので自転車でゆくのも辛かろうと思い、息子を塾に送ってから、家に戻り晩酌を始める。帰りは遅めの帰宅となった妻に迎えを任せるのだ。番組を争わないで済む夜は、私はビールを呑みながら「CSI」のDVDを見る。科学捜査班が挑む、過酷な損傷を受けた死体や、血しぶきだらけの殺害現場を見ながら食事を摂ることに、私はすっかり馴れてしまった。
 夜の残りの時間を使って、本を読む。
 今日は馳星周の『約束の地で』を読了。感想は→こちら
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 約束の地で

 作中、猫の出産場面がリアルなのだが、私の育った田舎では、猫は出産時に暗いどこかへ姿を隠したものだった。子猫が生まれると泣き声で場所が知れるのだが、大抵は押入れの中とか物置の片隅に彼らを発見することができた。子猫を段ボールに入れて川に流すシーンは、作中でも、私の経験でも胸をかきむしられるほどに痛い思いなのだが、作中では蓋を閉めガムテープで固定する。私の場合は、上を開けた状態にして、舟のように箱は水面を流れ去っていったものだ。少なくとも誰かに生きたまま拾われる可能性、あるいは岸辺に流れ着いて生き残る可能性というものを秘めていた分だけ、私の方が痛みが少なかったかもしれない。母に、こうするものだと教えられても納得のできなかった夕方のあの光景。いつまでも猫の声が耳に残る川辺の時間。

 そう言えば、他の牡猫が子猫を殺しにやってくるのだった。恋敵の牡猫である。父猫は全然助けに来ないので、牡猫に襲われそうになると、母猫は我が子を自ら食べてしまうのだった。私は母猫をとても可愛がって育てたせいか、作中のように子猫に手を出して妨害されるということはなかった。確かに母猫は気が立っているのだが、それは外の牡猫に対してであり、私には子猫たちを自慢げに見せてくれているという印象ばかりがある。猫が幼い私に教えてくれたものは、野生の掟であり、命を賭した生物界の闘争のルールであった。中絶された猫からはそんなものは得られないに違いない。