シュンの日記なページ

当別町スウェーデンヒルズ移住者 ブックレビュー 悪性リンパ腫闘病中 当別オジサンバンドOJB&DUOユニットRIOのVocal&Guitarist ツアーコンダクター 写真 スキー 山 田舎暮らし 薪ストーブ

海峡今昔

crimewave2007-08-04

 分厚い雲に包まれた灰色の空の下、小樽港を出発するフェリー上から、遠ざかり行く坂の多い町並みをぼおっと見つめた。乗り込むや否や売店で買ったのは新潟地ビールエチゴビールと、これまた新潟の元祖柿の種3包入り。これで朝からの加減の悪さを癒そうとしたのだが、すぐに酔っ払った。昼までの二時間を読書に費やしかけたのだが、耐え切れず船室で眠った。

 [rakuten:echigo:757663:image:small] [rakuten:echigo:757663:title]

 昼にはレストランでカツカレーを取り、カツの部分をつまみに生ビールを飲む。船窓越しに見えるのは積丹の風景だ。神威岬の形はどこからでも目立つ。また酔っ払ったのか、船室に戻ると、昼間だというのに睡魔ばかりに襲われ、最近では例のないほど永くだらだらとして眠りを貪った。

 意識の底で、揺れの質がローリングではなくピッチングであることに気づいていた。台風のウサギは、津軽半島を抜けようとしており、船は瀬棚海岸と奥尻島に挟まれたあたりを航行し、日没を迎えようとしている。起き出してデッキに出、強く生暖かい風を受ける。すぐに唇が塩辛くなった。カモメさえ飛んでいない。海面は大きなうねりを見せていた。

 夕食にもまたレストランへ。カフェテリア方式なのでモツ煮込、麻婆豆腐、サラダなどを取り、ジョッキをセットしてコインを入れると自動的に泡も立ててくれる生ビール販売機を面白がって使ってみる。

 船の中でひねもす読んでいる本は、花村満月『私の庭 蝦夷地篇』。「浅草篇」で沢山の人間を斬り津軽まで逃げ延びてきた権介が、茂吉という相棒を得て、海峡を渡るシーンを読んでいる。海峡の海風に嬲られて読むには、ちょうどよい本だと思って意識的にチョイスしてきたのだ。幕末の蝦夷。現在の日本海。どちらも海峡は大荒れに荒れて、波が船を叩きつけるが、幕末の権介・茂吉は小船を壊され、身一つで上陸し、こちらは1,800トンの巨体を誇る長距離フェリーでビールを呑んだり寝たり本を読んだり、どこが嵐の海なのか、不明なままである。