能登の被災者Ｍ君のこと

　会社のメールボックスに突然、学生時代の旧友からメールが飛び込んでくる。何と、能登輪島在住のＭ君が思い切り先日の震災で被災しているらしく、家が倒壊、今後の暮らしへの不安を抱えているらしい。大学の山岳会仲間なのでＯＢを通じて、ひとり1万円くらいずつ集めてカンパしようとの提案であった。

　思えば、Ｍ君は、山岳会でヒマラヤに遠征隊を出した折に寄付をしてくれたような、しなかったような。ぼくは寄付をする代わりに会社の事務所を勝手に提供して山岳会ミーティングに使ったのだ。下っ端なのに勝手に事務所の一部を提供するなど、当時は誠に勝手のきくコンプライアンス不在の、私には良き時代であった。

　Ｍ君の窮状をほっとけない、と思いつつ、会社のメールボックスであるため、他の用件を順次片付けているうちに、開きっぱなしのＭ君関係のメールを最後まで読まずに、何とぼくはそのままＭ君のことを忘れて帰宅してしまった。もちろん、帰宅してからそのことを思い切り思い出し、罪悪感に駆られている次第。体育館で眠れぬ夜を過ごしているのかもしれないＭ君、もとは災害の仕事に携わっていたはずの私なのに、本当に御免！