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太陽の帝国

 午後はこの2時間32分に渡る映画をじっくりとDVDで見る。

 日本軍侵略下の上海、外国人商社のお坊ちゃまな少年が、戦争を通じて親と生き別れになり、独りたくましく育ってゆくという話。

 全体が、子供の目からみた戦争という絵であり、圧倒的に世界がわけのわからないものとして映っている。それでいながら、善悪の区別、戦争の力学も知らぬまま、飢えだけを痛切に感じ、飛行機だけがいつも少年の夢であり続ける。大人たちの思惑など全然関係のないところで子供たちの生きるエネルギーはしっかりと放射される。少年の表情はいつも生命力に満ち溢れている。

 少年のピュアな眼で見た戦争だからこそ、国を超えた友情が存在する。少年たちの世界で。飛行機を愛する者同士の世界で。美しい映像の中で語られる純粋な心と生命への執着が感動的である。ジョン・マルコビッチ演ずるこれまたサバイバルの天才みたいな不良アメリカンの世界も、少年を賢く、タフに鍛えてゆく。

 甘くない歴史の現実の中で、惨たらしい戦争の中で、少年はきれいごとでなく、育ってゆく。空には、いつも飛行機が飛んでいる。いつも少年の目には飛行機ばかりが映っている。

 揚子江の川面のシーンで始まり、また同じ川面のシーンで終わってゆく。廃墟を自転車で走り回る少年の姿が印象的で、その元気さが羨ましいくらい。デリカシー溢れる叙事詩でありながら、何とも元気づけられる物語でもある。

 飛行機に触れるシーンには、涙してしまった。矢作俊彦の「男の子」っぽい部分とスピルバーグのそれとは、どこか共通している。いや、万国共通の、もしや男の子にしかわからない秘密のドアが、この映画のどこかにも、あるのかもしれない。