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シッド・ハレーの再起/翻訳家のひそやかな死

 いやはや、何に驚いたかといって、今日、ハヤカワから届いていた12月の近刊案内。奥様が亡くなって取材の手足を失ったためもう筆を折ったと言われていたディック・フランシスが、再起する。

 その名の通り、復活作品のタイトルは『再起』。しかも主役は、あのシッド・ハレー(うるうる)。

 但し、菊池光さんの翻訳ではなく、北野寿美枝訳である。ついでに言えば同月に発売となるロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズ最新作『スクール・デイズ』の訳も、加賀山卓朗の訳である。

 菊池光さんって、どうしたのだろう? と思って調べると、何と、この6月に亡くなっていたらしい。翻訳家らしく、ひっそりと。

 この二つのシリーズから菊池さんの名がなくなってしまうと、さすがに淋しい。これらのシリーズと人生において永いことつきあってきた読者にとって、菊地さんがいないという事実は、本当に耐え難い。作品にとっても悲劇である。ただもうひたすら、泣きたくなる。