ダム底に沈む道路をゆく
10年前に解体していた大夕張の町はもはや面影もない。「思い出をありがとう」という泣ける垂れ幕を広げていた横断歩道も、かつての学童たちの足跡とともに、影すら残していない。もちろん小学校も、商店も。一段降りたところにあったダンスホールも映画館もすべてが解体され古材屋に売られたか、焚き木として火にくべられたかしたに違いない。
道路の上空に大きなセメントの橋脚が林立し、やがて出来上がる新しい道路の存在を誇示している。今、ぼくらが走っている夕張から桂沢に抜ける山道は一部が確実に消えてなくなり、水面下の藻屑と成り果てるだろう。
かつてダートの砂利道だったところでよくキタキツネを二匹くらい見かけたものだ。そう思っていたら、桂沢湖に抜ける手前、今では綺麗に舗装の行き届いた下りカーブで、キタキツネが二匹ちゃんと餌を求めて寄ってくるのだった。動物の生態だけは今も変わっていない。