シュンの日記なページ

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山岳救助隊

 『どすぺ!』という番組で、富山県警山岳警備隊のドキュメントを二時間人渡って見た。
 剣・立山の四季を通しての実際の遭難救助例をドキュメントで追跡したものだが、かつて読んだ長野県警外勤課山岳救助隊のノンフィクションの書名が思い出せない。あの頃、ぼくは北アルプス通いの日々を過ごしていたから、本の内容の自分の中への浸透度がとても高く、一行一行に心臓を高鳴らせて、命がけの人命救助に呻吟したものだった。
 ぼくも若き先輩を山で失い、同僚・後輩たちの遭難・入院は数知れずといった口だったから、一方ならず山岳救助隊のかたがたにはお世話になってきた方だと思う。
 しかし、TV番組で放送された遭難事故は、無謀の一言に尽きるものが多かった。剣の「カニの縦這い」と呼ばれる鎖場は、若き登山者であっても足がすくむような危険な場所だが、そこを列になって上ってゆく老人の群れは、いくらNHKで「日本百名山」放映以来の人気だからといって、気軽に立ち寄れるところではない。
 早月尾根だって山岳名所ではあるけれど、気軽に進められる場所ではない。そんな場所で老人たちが一人歩きをして滑落する。台風のさなか、わざわざ猫又山に登りに行く中年男性が滝に落ちて消息不明になる。
 忘れていた件の本の名前をネットで調べると、一冊は『この山なみのこえ』信濃毎日新聞社編(1972年 二見書房刊 現在絶版)であることがわかった。北アルプスの南部、槍・穂高に集中した記録であるが、ロッククライミングのメッカである滝谷、前穂4峰東壁といった壁に加え、槍ヶ岳北鎌尾根など遭難の巣を抱えて、凄まじい生死の記録だったことを覚えている。これを読んだときの震えを思い出す。
 山の本には遭難記録も多々あり、常に死と隣り合わせのゲームである事は山をやる以上当たり前の事でありながら、こうした救助隊のような人たちの裏方に尻拭いされねばならないはた迷惑な愚挙というものも多い、ということだ。
 TV番組最後のシーンで、救助隊長が生還した遭難者たちの家族に一言伝えた。
 「山をやめろとだけは言わないでやってください」
 胸中熱くなった思いがした。