シュンの日記なページ

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流砂のごとく

 時間の流れは、流砂の如く、食い止められないものなのだけど、自分が二十歳前後にとても影響を受けた人々が、どんどん亡くなってゆく。
 倉橋由美子は主人公を「あなた」という二人称で書いた『暗い旅』で虜になり、その後、『パルタイ』『スミヤキストQの冒険』など、カフカの不条理を思わせる奇怪な小説をいくつも読んでいった。『婚約』『聖少女』『妖女のように』『ヴァージニア』といったあたりでぼくの倉橋由美子への道は途切れたけれども、衝撃の作家であったことは今も変わりない。
 永島慎二も死んでしまった。不良中年で、ヒッピーで、デカダンな、カリスマ漫画家を追いかけたものだった。『フーテン』『若者たち』など、独特の、若く、価値観をとことん問い詰める純粋さを書き手も読み手も持ち得ていたあの時代を、決して忘れることはないだろう。
 串田孫一という人は、若かりしぼくを、文章の力で山に引きずり込んだ人の一人である。シンプルな装丁の本『山のパンセ』は、今も書棚の一角を占めて神々しい。シンプルな山のエッセイには、山や自然と同化できる人間のぬくもりが存分に感じられ、何よりも唯一無二の価値観、文章なのであった。
 時代はずれるが、ついにエド・マクベインも亡くなってしまった。早川書房での来日記念パーティで、数分だけ話を聞かせていただいた夜、死んだときに備えて87分署シリーズの完結篇を既に書いてあるのだと語っていた、あのセリフが、彼一流の笑い話ではなく、本当であることを願いたい。