新人歌手

　さらに地元方面に移動していつものスナックに行くと新人女性演歌歌手とその関係の人たちが一群を成していた。小さな店なので、自己紹介され、さんざん客のリクエストに応えていろいろな他人の演歌を歌って美声を聞かせてくれたが、自分の曲はまだカラオケになっていないのだそうだ。これからもカラオケになるのかどうかはわからない世界なのだろう。最後には二人しかいないぼくと同僚に握手を求めて、零下の夜の中に去って行った。握手で曲を買う人がどれだけ世の中にいるだろうと思うと、ため息が出るばかりだけれども。