シュンの日記なページ

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さとうきび畑

 ドラマを最後のほうだけ見たのに、ぐっとこみ上げてきた。歳をとって涙もろくなったとよく言うのは、涙腺のストッパーが削れて緩んできているせいだ、みたいなことを人間の体を特集したような番組で言っていたが、それは嘘だろう。歳をとって泣きそうになるのは、体験の積み重ねの厚さだ。
 例えば沖縄戦を題材にとったこのドラマの場合、まずぼくは中学時代に森山良子のファンだったから、さとうきび畑の歌をもてる感受性のすべてを賭けて聴いたのだ。そして大学時代に吉村昭のノンフィクション・ノベルを読み漁り、そこで『殉国』に出会う。死者の数、生存の確率、日本兵によって犠牲になった日本人の数。事実の重みがぼくを窒息させそうだった。
 そして今日のようなドラマでは、そうした沖縄戦との接点がすべて一瞬にして甦る。ドラマの画面の向こうの事実の重みに噎せるのだ。こみ上げてくるのだ。涙腺のストッパーなんかじゃなく、これまでに思いを費やしたテーマにまた出くわしてしまったことへの衝撃が。人間の根底にある悲しみを引きずり出すというだけの話なのだ。