シュンの日記なページ

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浜頓別<トシカの宿>

 十八年前に先代の宿主である岸なにがしから現在の女性宿主が引き継いだ旅人民宿。通称<とほ宿>の一つ。ということは阪神の優勝した年から宿主が引き継いだということになる。野球に興味のないぼくにも宿主にもどうでもいいけれど。岸をアイヌ語で<トシカ>というらしい。それに宿はクッチャロ湖の湖畔にある。借りた部屋の窓から湖が見える。台風で風雨にさらされてなければ夕陽の奇麗な窓辺であったはずだ。
 ぼくはこの宿へ何度も来ている。冬にも何度か。少し恥ずかしいが、言ってしまうと、妻にプロポーズしたのもここだった。男女別相部屋の宿で。雪の舞う夜。汚れた壁を見据えながら。ランプの点る洗面所。おつりのくる汲み取り便所。ベニヤ板の立てつけ。牛舎を改造した食堂。農家の跡地に手を入れただけの貧しい宿。今はペンションなみに立派な新館が増築されている。
 他の部屋は男女別相部屋。<とほ宿>の基本だ。全員で歓談しながらジンギスカンを突つく。毛蟹が半分に割られ、一人一人の皿に乗っている。ホタテの刺し身。茹でトウキビ。これからどこへゆくの? 向かいのおじさんが息子に訊ねる。ぼく砂金を採りに来たんです、と息子が応える。
 あの頃にいた樺太犬の子どもたちが今は軒先に繋がれていた。南極犬と称した父の湖太郎はもういない。冬には雪橇を引いた犬。映画『南極物語』出演のタロの息子。だから今いる犬はタロの孫たち。うちの息子は犬には目がない。動物という動物が大好きで、必ず近寄り頭を撫でる。剥製も必ずさわる。