板橋駅の近くで、ぼくは0歳から4歳までを両親と過ごした。2階建てのアパート住まい。大家さんととても人間的に付き合いが深くて、埼玉に引っ越してからも、中学生になるまでは、まるで板橋の大家さんが実家でもあるかのように、夏休みや冬休みには、一人で何日も泊まらせてもらい、近所の友達とも長い付き合いを続けた。
付き合いが途絶えたのは、優しいお姉ちゃんが嫁ぎ、優しいおじちゃんかなくなってから。
今は様変わりしたその家におにいちゃんの表札だけが残っていた。
今夜、たまたまツアーの最終帰着地が、板橋だったために、古い路地を辿り、そこまで確認してから帰路につくことにしたのだった。
